この記事では、全54帖ある超長編『源氏物語』の十九帖「薄雲(うすぐも)」のあらすじと主な登場人物を簡単にまとめました。
『源氏物語』十九帖「薄雲(うすぐも)」は『光る君へ』では何話のどの辺りのこと?についても独自の考察と感想もお届けします。
『光る君へ』『源氏物語』の両方を楽しんでいただくきっかけになれば幸いです。
大河ドラマ「光る君へ」の全話のあらすじ&感想はこちらからどうぞ。
【源氏物語】十九帖「薄雲(うすぐも)」あらすじ。
十九帖「薄雲(うすぐも)」のあらすじを一言で表すと
紫の上、明石の姫君を養女に。藤壺、死去。冷泉院は出生の秘密を知る。
では、ざっくりあらすじは?
光源氏は明石の姫君の将来を考え、紫の上の養女として二条院に迎えます。凶兆とも見られる天変地異が頻発する中、藤壺は灯が消えるようにその生涯を閉じます。人々は藤壺の徳をしのんで、光源氏はひとり悲しみ嘆きます。冷泉院は出生の秘密を知り苦悩します。そして光源氏に譲位をほのめかします。
主な登場人物
光源氏:31~32歳。故桐壺帝の子として産まれるも臣籍降下して源氏となる。
紫の上:23~24歳。源氏の正妻。子はなく明石の姫君を養女に迎える。
明石の君:22~23歳。源氏の子を産むが、その身分差に苦悩する。
明石の姫君:3~4歳。源氏と明石の君との間に生まれた姫。
冷泉帝:13~14歳。故桐壺帝と藤壺の子とされているが、実の父は源氏。出生の秘密を知る。
藤壺:36~37歳。故桐壺帝の妃、冷泉帝の母。
斎宮女御:22~23歳。冷泉帝に入内。源氏のかつての愛人である故六条御息所の娘。
十九帖「薄雲(うすぐも)」のポイント
桐壺更衣に似ていたことで、光源氏に恋焦がれてしまう藤壺。密通の末源氏にそっくりな不義の子を産んでしまいます。罪悪感にさいなまれながらも、息子・冷泉院を守るために光源氏との不貞関係は持たず、光源氏に冷泉院をバックアップしてもらえるよう強い女性へと進化していきます。その藤壺が亡くなってしまって、色々なバランスが崩れます。
母・藤壺が亡くなった後、藤壺に仕えていた僧から出生の秘密を知る冷泉院。聡明な冷泉帝は、天変地異や災いが続いているのは、実の父である光源氏が息子である自分に臣下として仕えているという乱れた状態が原因だと思い悩みます。
そして光源氏も心の支えを失います。こういう時に光源氏にありがちな行動で、かつての愛人六条御息所の娘・斎宮女御(秋好中宮)に言い寄ります。覇権争いの真っただ中にいるはずなんですが、光源氏の「かまってちゃん」の恋模様が『源氏物語』の色どりであり、深みだと感じます。
かつての愛人・六条御息所に似ていたのか、昔、紫の上に惹かれたように、娘のように慈しむ気持ちと、男女の愛情を混同してしまう傾向にある光源氏は、斎宮女御にも言い寄ります。デジャブにしか見えなくて、ちょっと笑えます。
「光る君へ」では何話のどの辺りなのか考察、そして感想も。
『光る君へ』でそのものズバリという場面はないものの、藤壺が光源氏との2度目の密通で冷泉天皇を身ごもってしまったことを後悔して3度目は阻止したこと、その後も、光源氏のバックアップは得ながらも冷泉天皇のために動いた藤壺の「芯の強さ」と言う点で見ると
『光る君へ』の彰子(見上愛さん)が一条天皇と定子の皇子・敦康親王(片岡 千之助さん)から寄せられる思慕以上の感情を、母のような包容力で受け止め続けたこと。に通じると思います。
『光る君へ』41話”揺らぎ”では、大人になった敦康親王が彰子の元にやってきて、御簾をあげて彰子に近寄る場面があり「藤壺と源氏」の不義密通か?とハラハラさせられましたが、42話”川辺の誓い”では、妻を得て気持ちが落ち着いたようで、彰子に「お変わりになられた。国母の風格が」と穏やかに話せる関係になりました。
こんな風に彰子と敦康親王が微笑んで会話できるようになったのは、彰子の落ち着きと芯の強さ由縁で、その点が藤壺と気質が重なると言えます。
十七帖「絵合」で秋好女御が冷泉帝に気に入られるようにと「須磨絵日記」まで出してきた光源氏なのに、性懲りもなく秋好女御に手を出そうとするところが光源氏の光源氏なところです。こういう光源氏の気質は『光る君へ』では距離が置かれているようです。
「光る君へ」は『源氏物語』を土台にして全方位にストーリーを展開していますね。
大河ドラマ「光る君へ」の全話ネタバレあらすじはこちらかどうぞ↓
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まとめ
十九帖「薄雲(うすぐも)」の簡単あらすじと、「光る君へ」におけるオマージュを探りました。
灯が消えるように亡くなった藤壺と『光る君へ』の彰子が重なり、敦康親王は光源氏と同じ道を歩んでしまうのかも。と、『光る君へ』40話以降の展開では連想させられた「薄雲(うすぐも)」でした。
『光る君へ』の45話では道長が賢子が我が子だと知ります。賢子が知ることになったら、賢子は冷泉帝のようにふるまうのでしょうか。「オンベレブンビンバ」や「ウンタラクーソワカ」と賢子が唱えないように見守りたいです。
『源氏物語』は54帖の超大作。スキマ時間を利用して3か月かかってやっと読破しました。前半で目の疲れに悩まされて、耳の読書を色々試してみました。その様子はこちらからお読みいただけます。
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「源氏物語」を読んでみたい方におすすめの本7選!
『源氏物語』原文は文字数約100万文字(といってもイメージ沸きませんよね)、400字詰め原稿用紙で約2400枚と言われています。現代語訳だと注釈の言葉も入ってくるので、とんでもない長編小説です。
まずはオーディブルでざっくり内容を把握して、興味のある部分を深堀りしていくことをおススメします。
活字や紙のボリュームを見ると「むり~」と思ってしまいますが、オーディブルだと全体ボリュームに関係なく流れていきますので私には耳での読書が合っていました。
一番売れている現代語訳は角田光代さん版。全8巻です。
現代語訳は瀬戸内寂聴版と与謝野晶子版もおすすめします。
読破するぞと読み始めたものの、絵合の巻あたりでギブアップするのを「絵合がえり」(高床式倉庫のネズミ返しみたいですね)と言うらしいですが、そこまでたどり着けず、二帖”帚木”で「どの巻もこんなに長いの~」と思って諦める人も多いと聞きます。
私は七帖”紅葉賀”で目の疲労に悩まされて、オーディオブック併用にしました。朗読の収録時間は『源氏物語・与謝野晶子版』で70時間。瀬戸内寂聴版で135時間くらいです。途中寝てしまったり、意識を失いながら、約3か月で聴き終わりました。
いきなり100万文字の大海に漕ぎ出さず、とにかくざっくり『源氏物語』を味わいたい方には、田辺聖子さんの『新源氏物語』がおススメです。一帖”桐壺”がなくて二帖”帚木”から始まっていて、ぎゅっと詰まっています。
参考文献としておススメなのは「紫式部の欲望」。作者の酒井順子さんの着眼点が面白くて、今のご時世だと非難されてしまうかもしれない見解も楽しく読めました。
「イギリスは美味しい」など英国エッセイでご存知の方も多い国文学者の林望先生の源氏物語関連本は、分かりやすく古典に寄せた知見を読めます。「くり返し読みたい」シリーズは特に絵が多くて優しい内容です。
真打ちは林望先生の「謹訳源氏物語」。林望先生の「謹訳平家物語」もとてもいいのですが、源氏物語も読みやすくて、リンボー先生独特の品があります。前書きを読むと内容が予想できるので、ネタバレ不要の方はご注意下さい。
※本ページの情報は2024年11月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認下さい。
#源氏物語
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