この記事では、全54帖ある超長編「源氏物語」の四帖「夕顔(ゆうがお)」のあらすじと主な登場人物を簡単にまとめました。
2024年大河ドラマ『光る君へ』で、主人公まひろ(吉高由里子さん)がいよいよ『源氏物語』を執筆していきます。
『光る君へ』では何話のどの辺りのこと?についても独自の考察をお届けします。『光る君へ』『源氏物語』の両方を楽しんでいただくきっかけになれば幸いです。
大河ドラマ「光る君へ」の全話のあらすじ&感想はこちらからどうぞ。
四帖「夕顔(ゆうがお)」あらすじ。光源氏は17歳
「夕顔」のあらすじを一言で表すと
光源氏は夕顔の咲く家の女とお互いの素性を明かさないまま逢瀬を重ねるが、女は物の怪に取り憑かれて急死する。
【簡単あらすじ】四帖「夕顔」
乳母の家を訪ねた光源氏。隣の家の板塀に夕顔が咲いていました。従者がその花を手折ると隣の家から出てきた女童が、手折った花を載せてくださいと扇を差し出します。扇には心惹かれる香り、見事な筆の歌。光源氏は興味津々になります。
従者の惟光の手引きで光源氏は夕顔の家の女と逢瀬を遂げます。そう高い身分の女でもなさそうですが、光源氏は夕顔の魅力に溺れていきます。
葵上や六条御息所など、周りの女性は光源氏にすっかり身をゆだねてはくれません。心から打ち解けて、受け入れてくれる夕顔に胸が苦しくなるほど入れ込みます。
夕顔の家での逢瀬は民の大声や町の音が騒がしいので、光源氏はもっと静かに過ごしたいと近くの古い邸「なにがしの院」に夕顔を連れて行きます。
その恐ろしい院で、光源氏と夕顔は仲睦まじく過ごしますが、漆黒の闇の中、夕顔は何かに取り憑かれて正気を失い、帰らぬ人となりました。
悲しみにくれる源氏は病に臥せってしまいます。秋、病から癒えた源氏は、夕顔の侍女であった右近から、実は夕顔は頭中将との間に子まで成した女であったことを聞かされる。
空蝉と夕顔とのはかない縁に、源氏は物思いに沈みます。
突然主を失って途方に暮れる右近を光源氏は面倒を見ます。光源氏の乳兄弟の惟光はこの後の巻でも光源氏のそばを離れず、恋の手引きや困ったことにも落ちついて対処する光源氏思いの頼もしい存在です。
四帖「夕顔」の主な登場人物
光源氏:17歳。
夕顔:美しく源氏の恋人となる。可憐で素直、従順な女性。
惟光(これみつ):源氏の従者。源氏の乳母の実子で、源氏とは乳兄弟にあたる。
右近(うこん):夕顔の侍女
四帖「夕顔」のポイント:光源氏の忘れられない人
気品がありながら、歌を贈るなど積極的な夕顔。高い身分の女でもないのになぜこんなに魅かれるのかと自分で分からないほど、光源氏は夕顔に逢いたくてたまらず、胸が苦しくなるほど入れ込みます。お互いに素性を明かさないままなのに、夕顔は光源氏に何の隔たりもなくおっとりしてあどけなく、かといって男女のことには無知ではありません。
「光る君へ」の道長も正妻の倫子とも妻の明子とも、だんだんと心休まる居場所が見いだせないようになってきています。光源氏も無償の愛を求めてさまよっているようです。
光源氏にとっては忘れられない恋人ですが、頭中将のかつての恋人「常夏の女の物語」だと判明します。光源氏と頭中将はこの後も同じ女性に迫ったりして、なにかと忙しい『源氏物語』です。
「光る君へ」では何話のどの辺りに出てくる?
2話”めぐりあい”で「夕顔」のオマージュが描かれています。
まひろが代筆仕事をしているところに、意中の人に文を書いて欲しいとやってくる優しそうな男がいます。
その男のために書いた歌は桜の思い出を書いた歌だったのですが、女からは「あなたと桜なんて見てない」と突き返されてしまいます。男は途方に暮れて再びまひろのところにやってきます。
そこで、まひろは男に女性との思い出を聞きます。すると男は「彼女の人の家には夕顔が咲いていました」と答えます。この時点で四帖”夕顔”オマージュ確定なのですが、その後まひろが詠んだ歌が
寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 花の夕顔
もっと近くによってだれなのかたしかめたらいかがでしょう。夕影の中、ほのかにご覧になった夕顔を。
この歌はもともと四帖”夕顔”で光源氏が夕顔への返歌として送った歌ですが、まひろとしては歌で相手の心をあーだこーだと言うより、正面切って会ってみたらいかが。と歌に込めたようです。
おかげで、2話”めぐりあい”に出てくる男女は実際に話しをして、男が字を書けないことを思い悩んでいたことも女からしたら何でもないことで二人はハッピーエンドというストーリー展開でした。
この代筆の経験が、31話”月の下で”でまひろが道長に一条天皇の人となりをリサーチする理由になったことは疑いようもありません。生身の人間としての一条天皇を知り、嘘偽りなく『源氏物語』に投影できたのでしょう。
2話”めぐりあい”のあらすじは↓のリンクからお読みいただけます。
- 2話夕顔が咲いている家の女に恋した男の文をまひろが代筆した
2話”めぐりあい”を見た時点では『源氏物語』を読んでいなかったので、全く気付きませんでした。拾い切れていないエピソードをぜひ教えて下さい。
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まとめ
四帖「夕顔」の簡単あらすじと、「光る君へ」におけるオマージュを探りました。
夕顔は光源氏の理想像にピッタリの女性でした。でもあっという間になくなってしまいます。夕顔が亡くなって初めて侍女の右近から、実は夕顔はかつて頭中将の恋人で2人の間には娘もいると聞かされる光源氏。後の因縁へと続いていきます。
夕顔亡き後、主を失った右近を見捨てず面倒を見る光源氏。こうやって一度関わりを持った人は最後まで面倒を見るというのが光源氏の情の深いところです。
もののけや闇の恐ろしさ等、平安時代の世界観を存分に感じる四帖”夕顔”。光源氏がよく泣くこと、泣くこと。全てが前世からの因縁ということで受け入れるには、潔さすら感じます。
『源氏物語』は54帖の超大作。スキマ時間を利用して3か月かかってやっと読破しました。前半で目の疲れに悩まされて、耳の読書を色々試してみました。その様子はこちらからお読みいただけます。
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「源氏物語」を読んでみたい方におすすめの本7選!
『源氏物語』原文は文字数約100万文字(といってもイメージ沸きませんよね)、400字詰め原稿用紙で約2400枚と言われています。現代語訳だと注釈の言葉も入ってくるので、とんでもない長編小説です。
一番売れている現代語訳は角田光代さん版。2024年8月時点で7巻まで刊行されています。
角田光代さんの現代語訳はまだ全部刊行されていないので、今すぐ読みたい方は瀬戸内寂聴版か与謝野晶子版をおすすめします。
よし!と読み始めたものの、須磨の巻あたりでギブアップするのを「須磨がえり」(高床式倉庫のネズミ返しみたいなもの?)と言うらしいですが、二帖”帚木”で「どの巻もこんなに長いの~」と思って諦める人も多いと聞きます。
私は七帖”紅葉賀”辺りで目が疲れてオーディオブック併用にしました。オーディブルだと収録時間は『源氏物語・与謝野晶子版』で70時間。瀬戸内寂聴版で135時間くらいです。途中寝てしまったり、意識を失いながら、約3か月で聴き終わりました。
いきなり100万文字の大海に漕ぎ出さず、とにかくざっくり『源氏物語』を味わいたい方には、田辺聖子さんの『新源氏物語』がおススメです。一帖”桐壺”がなくて二帖”帚木”から始まっていて、ぎゅっと詰まっています。
参考文献としておススメなのは「紫式部の欲望」。作者の酒井順子さんの着眼点が面白くて、今のご時世だと非難されてしまうかもしれない見解も楽しく読めました。
「イギリスは美味しい」など英国エッセイでご存知の方も多いかもしれない国文学者の林望先生の源氏物語関連本は、分かりやすく古典に寄せた知見を読めます。「くり返し読みたい」シリーズは特に絵が多くて優しい内容です。
真打ちは林望先生の「謹訳源氏物語」。林望先生の「謹訳平家物語」もとてもいいのですが、源氏物語も読みやすくて、リンボー先生独特の品があります。前書きを読むと内容が予想できるので、ネタバレ不要の方はご注意下さい。
※本ページの情報は2024年8月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認下さい。
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