2022年9月時点、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は35話まで放送されています。
鎌倉殿は頼朝から頼家へ、そして今や実朝の時代になっています。
「全部、大泉のせい」と言われた頼朝(大泉洋)の背中を見て、学んできた義時が
今度は「全部、義時のせい」と言われる、ゴッドファーザーになろうとしています。
この記事では、さかのぼって5話「兄との約束」の感想をお届けします。
頼朝の没後、自ら厳しい決断をしてきた義時を管理人も見守ってきたので、初期の5話が懐かしく、キャラ設定などで気づく点がありまして、最初見た時とはまた違う味わいを感じています。
義時、初めて人を斬る
5話「兄との約束」では、頼朝がいよいよ挙兵します。初陣です。
伊豆目代・山木兼隆の館に攻め入って、後見の堤信遠(吉見一豊)も成敗するのですが、義時にとっては生まれて初めての戦(兄・宗時も初めて)。
人を斬るのも初めてです。
何度も刀を振り下ろして、堤信遠に致命傷ではない傷を負わせます。
そこで時政パパが「武士の情だ、ひと思いにやれ」と義時に言います。
結局、宗時がとどめを刺すのですが、義時は堤を斬ったあとも、体の震えが止まりません。
時政パパが義時の震える腕をつかんで「これで終わりじゃねーぞ。始まったばかりだ。」と声を掛けます。
この頃の時政パパは柔らかくて大らかでです。先々、立場が逆転する日がくるなんて、誰が想像したでしょうか。
御恩と奉公システム
頼朝は平家討伐に進軍していくだけでなく、東国での地位確立のために、豪族の土地を奪って他の御家人に分け与えるシステムをいちやはくスタートしました。
35話で執権・北条時政がやろうとしていることと、全く同じです。
頼朝の場合、本人=鎌倉殿でしたが、執権・北条家にとって「鎌倉を守る」とはどういうことなのかを改めて考えさせらました。
「そこに義はあるのか?」と木曽義仲風に問いかけてみたいです。
したたかな三浦義村
頼朝軍が大敗した石橋山の戦い。
三浦義村のキャラがこの頃から際立っています。
義村は、父・義澄(佐藤B作)の命には従いますが、風を読む力がすごいです。
無理をして川を渡ってまで北条に加勢しません。
義に厚い父・義澄に対して、義村はというと、勝ち目がないと分かった戦には、「義時、ごめん」の一言で戦に加わらないしたたかさを持っています。
このしたたかさと、つかみどころのなさ。義村の魅力ですね。
石橋山の戦い
3000騎の大庭軍の兵士が掲げる松明の美しさと、相対する時政の名乗りが素晴らしいです。
大庭から仕掛けられた悪口合戦にも、さすが歌舞伎役者さん、屋外のロケで地声があれだけ響き渡り、大迫力です。挑発するどころか挑発されてしまいましたが…。
石橋山の戦いは、頼朝史上、唯一の敗北です。初陣が敗北だったのにもかかわらず、その後巻き返し、鎌倉幕府設立まで達成した頼朝の強運を改めて実感しました。
宗時の言葉
残念ながら5話「兄との約束」で退場した宗時(片岡愛之助)ですが、
頼朝の観音様を北条館にとりに出発する時、宗時が義時に言った言葉が印象的です。
「坂東武者の世を作る。そのトップに北条が立つ。
そのためには源氏の力、頼朝の力がいるんだ、どうしてもな。」
この言葉が全てを表していると思います。
34話「苦い盃」の最後に畠山重忠が義時に向かって
鎌倉のためなのか、北条のためなのか
「鎌倉殿の13人」34話より
と問いかけますが、答えは5話の時点ですでに出ていました。
7月に鎌倉・大河ドラマ館の展示を見に行って知ったのですが、この5話の宗時と義時の別れのシーンは、日が沈む瞬間の「マジックアワー」に「今だ!」と、俳優さんとスタッフさんが一丸となって1テイクで撮影したそうです。
1話「大いなる小競り合い」でも、長回しのシーンがありました。
大河ドラマは撮影も長期間ですし、こういう瞬間瞬間で撮影に関わる全員が呼吸を合わせることで、家族のような連帯感が生まれていくのだと思いました。
宗時を殺したのは「善児と一緒に水遊びをいたしましょう」から、引き続き、善児の必殺仕事です。
まだこの頃はアサシン善児には血が通っていない状態です。この頃の善児でさえ、懐かしいです。
小さな観音像
小道具という言い方が適切かどうかわかりませんが、頼朝が髻から出してきた小さな観音像は、5話以降も登場してきます。
43年前の大河ドラマ『草燃える』には、この小さな観音像は扱われていませんでした。
おそらく43年の間に、鎌倉幕府があったとされる大倉幕府遺跡周辺の発掘と歴史研究が進み、信心深い頼朝と観音像が結び付けられたのだと思います。
『鎌倉殿の13人』で、頼朝に挙兵を決意させた父・義朝(とされる)のドクロもなかなかシュールですが、『草燃える』(総集編しか見ていないのですが)では、源氏嫡流だけに相伝できるものとして、「源太産衣(げんたうぶい)の鎧、髭切(ひげきり)の太刀」がとりあげられいました。
小道具も歴史研究や時代によって、変遷していきます。
八重、政子とりく、実衣
女性陣の心の動きも丹念に描かれています。
八重は新垣結衣さんが演じられているから、あそこまでわがままでも許せるキャラになっている気がします。
泣きながら船をこぐ江間次郎が不憫でなりません。
政子とりく、実衣の3人で伊豆山権現で身を隠します。
3人の結束が固くなってきました。
仁田常忠が頼朝の生死がわからないと報告しにきたときに、実衣が決定的な瞬間を見たの?と仁田に問い詰めます。
つかみどころのない、横やりを入れるだけのキャラかと思いきや、実衣はこの頃から芯の強さが垣間見えます。
まとめ
5話「兄との約束」では、宗時の言葉こそ『鎌倉殿の13人』のテーマだということを再認識しました。
頼朝と北条が出会ってこその武家社会の確立。
伊豆の片田舎で起きた、小さな偶然が時代を作っていきます。
義時(小栗旬)が、まだ純粋で青臭くて、30話辺りの泰時とオーバーラップします。
今の義時を見ていられなくなったら、また5話に戻ってこようと思いました。
放送開始当初は、その回ごとの内容に夢中で見ていましたが、今は、前半部分の話から、なるほどと思うことがたくさんあり、三谷さんが撒いた布石を拾い集めるのが楽しいです。
まだ『鎌倉殿の13人』を見ていない方も、何話か見たけれど見逃している方も、ぜひ1話からのイッキ見をおすすめします。
>>こちらの記事で『鎌倉殿の13人』のあらすじネタバレを全話紹介 しています。
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