36話の放送を見るのに先立ち、畠山重忠の終焉の地である、横浜市旭区鶴ヶ峰に行ってきました。
来週から中川大志さんに会えなくなるのか、と思うと悲しくてなりませんが、一旦、気持ちは置いておきまして、36話を鑑賞したいと思います。
結論から言いますと『鎌倉殿の13人』36話では、史実に残っている典型的な型で重忠の最期は描かれていませんでした。どんな風に「畠山重忠の乱」が描かれているのかを見てきたいと思います。
36話あらすじ(ネタバレ注意)
深まる北条時政(坂東彌十郎)と畠山重忠(中川大志)との対立。りく(宮沢りえ)を信じる時政は、源実朝(柿澤勇人)の下文を得て御家人を招集。三浦義村(山本耕史)、和田義盛(横田栄司)、稲毛重成(村上誠基)らが集い、対応を協議する。一方、手勢を率いて鎌倉を目指す重忠。板挟みとなった義時(小栗旬)は、政子(小池栄子)、時房(瀬戸康史)らと事態の収拾を図る。そんな中、父・義時を心配する泰時(坂口健太郎)は……
引用:https://www.nhk.or.jp/kamakura13/story/36.html
重忠・中川大志さんと、義時・小栗旬さんの一騎打ちシーン
馬から降りて一対一の対決シーン。インタビュー記事によりますと、台本には「義時との対決シーン」とだけあり、ディーテールは小栗旬さんの発案で決められたそうです。
馬上にいるときには太刀で、地上では小太刀でと、戦い方の基本に忠実でありながら、殴り合いのシーンは現代風で、壮絶過ぎて、しっかり見届けなければ、目を離してはならない気持ちになりました。
「周りの者は手を出すな」と義時と重忠の2人だけで対決しているシーンは、リドリー・スコット監督『グラディエーター』の、ラッセル・クロウが演じたコロシアムでの死闘を思い出しました。大河ドラマで、ここまでのアクションシーンが撮影されるとは思っていなかったので、衝撃的でした。
あそこで重忠が義時を殺していたら、重忠は完全に謀反人になり、義村や和田義盛に討たれていました。ただ自分の誇りのためだけに戦っている重忠は、結末がどう転ぶかまで考えていなかったはずで、盟友である義時にとどめを刺すことができなかった。それだけだと思いました。
35話のあらすじでも書いたのですが、中川大志さん主演の「坂道のアポロン」千太郎と全く同じ、友に最後の一撃は与えず(もともと中川さんは姿勢がよいので)背筋をピンと伸ばして、馬にまたがり飄々と去っていく表情には、一点の曇りもありませんでした。35話あらすじと感想
その姿を見送る三浦義村、和田義盛の表情、横たわっている義時の一筋の涙を見て、感極まりました。
最初に、重忠が泰時のところに駆けていったのは、息子・重保を殺されたからか。と一瞬思いましたが、多分違っていて、義時と戦いたかったからだと思います。戦の時の、和田義盛の出方、義時の考え方も全部わかった上での行動です。
「腹をくくった」重忠の表情と言葉が刺さります
和田義盛が重忠陣にやってきます。
「やけではない、筋を通すのです」
この言葉を言い終わった後の、重忠・大志さんの表情がすさまじいですね。重忠が乗り移ったとしか思えません。24歳でここまで演じ切る中川大志さん、山本耕史さんの言葉を借りると(いい意味で)末恐ろしいです。
「戦など誰がしたいと思うか!」
「命を惜しんで、泥水をすすっては末代までの恥」
坂東武者は「死んで花実が咲くものか。」とは思わないんですね。残念でなりません。
和田義盛と畠山重忠
8話 「いざ鎌倉」の時に、大庭軍から頼朝に降伏してきた畠山重忠、 和田義盛と三浦義村はお祖父さんを畠山に討たれているので、当初、和田義盛は畠山を絶対許さないという態度でした。8話の感想
9話「決戦前夜」で、頼朝の命により、2人で伊東祐親を討ちに行く場面で、立派なコンビ誕生です。9話の感想
中川大志さんも、8月に開催されたスペシャルトークで
「和田義盛とも1話から一緒で、いがみ合いつつ、一番分かりあっている仲。ライバルでありながらよき友とのことでした。」と語られていました。
「鎌倉殿の13人」中川大志 大野泰広 スペシャルトークin横浜 レポと感想
そこからの付き合いなので、和田義盛が重忠の情が移っても当然、二人にしかわからない部分があったに違いないです。「見栄えが良くて、頭が切れる。自分と同じ匂いを感じる」発言も許してあげたいです。
腕相撲ができたら流れが変わっていたかもしれません。
謀反の疑いからの討伐、義時の考え
重忠の一件は、冤罪、言いがかりも甚だしいです。が、歴史は繰り返されます。
15話「足固めの儀式」で、上総広常が謀反の疑いをかけられて、御家人全員の前で梶原景時に斬られたのと、ほぼ同じ図式です。
御家人の間で信頼の厚い畠山重忠は、りくの一存だけではなく、執権・時政にとっても脅威だったのかもしれません。
上総広常の時は、若い義時には理解不能で頼朝の決断に耐えられなくて、小栗旬さん的にも苦しい撮影で、撮影当日は重苦しい雰囲気に包まれていたそうです。「全部大泉のせい」の頃です。
あの頃、上総広常の処遇については、頼朝と大江広元が相談しました。頼朝は源氏が棟梁の武士の社会を作る、という明確なビジョンがあり、非情な鬼になり切りました。大江広元も京に嫌気がさして鎌倉に来たという経緯があり、武士の世の中を作るため、というのを常に考えていました。頼朝も大江広元も、世の中を正すという大義名分のために最善の道を選んできたと思います。
今回の義時は、重忠追討に向かう前にすでに政子に対して、
「姉上、いずれ腹を決めていただくことになるかもしれません。」と言っています。
頼朝の背中を見て学んできた義時だからこそ、鎌倉を守るために、すでに最悪の場合を想定しています。次の一手を頭に巡らせた上での重忠討伐です。「全部、義時のせい」です。
足立遠元(大野泰広)目がぴくぴく
10話「根拠なき自信」で、頼朝から呼ばれたということで、突然な感じで初登場した足立遠元。実衣に「今日、あれが一番得体が知れない。怪しい。」と言われていたのが昨日のことのようです。
10話の感想
足立遠元が「執権殿が怖い。」と言っていたのは、足立の所領も武蔵だったからで、明日は我が身。
目がぴくぴくする程、恐ろしかったと思います。
足立遠元役の大野さんのツイッターから
足立遠元は、この後所領も守って、子々孫々まで繁栄されました。
屋敷で見送っていた畠山重忠の正室・ちえさんではないですが、足立遠元の娘・菊の前も重忠に嫁いでいます。菊の前が重忠の戦場まで駆けつけて自害した地。
乗ってきた駕籠ごと、埋葬されたと言われる駕籠塚です。
まとめ
義時の父・時政に対する言葉
逃げるいわれがなかった。戦ういわれもなかった。重忠がしたのは己の誇りを守ることのみ。
坂東武者の鑑、重忠が最期を迎えました。
畠山重忠終焉の地に行き、鶴ヶ峰が高台にあることも実感した後での36話だったので、正直、見るのをためらった放送回でした。鶴ヶ峰のゆかりの地を色々回りまして、「ここで矢が畑のようにいっぱい打たれたのか」「ここに首塚があって」など、最期のシーンをぼんやりと思い描いていたので、全く予想していない映像と、壮絶で、そして感情にフォーカスしたストーリー展開に、とても驚き、心に深く刻まれました。鶴ヶ峰レポート
時政から続く、「戦は怖いか」「ちびっちゃった」発言も健在で、ひたひたと迫ってくる恐ろしい展開の半面、次世代へのバトンタッチが一歩一歩進んできている印象を受けます。15話「足固めの儀式」で上総広常が粛清された後、義時と八重の間に泰時が誕生しました。泰時とすれ違った時の、のえが演技だったのかは、次回以降確かめたいところです。
次回、時政の処遇がどうなったとしても重忠は戻ってきません。憎しみや悲しみの連鎖が続く『鎌倉殿の13人』。最初の頃の、コメディータッチ多めの放送回が懐かしいです。
もし、前半部分を見逃している方は、ぜひ『鎌倉殿の13人』の前半のストーリーから見ていただきたいです。
>>『鎌倉殿の13人』のあらすじネタバレを全話紹介 はこちらから。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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