この記事では、全54帖ある超長編「源氏物語」の五帖「若紫(わかむらさき)」のあらすじと主な登場人物を簡単にまとめました。
2024年大河ドラマ『光る君へ』では何話のどの辺りのこと?についても独自の考察をお届けします。『光る君へ』『源氏物語』の両方を楽しんでいただくきっかけになれば幸いです。
大河ドラマ「光る君へ」の全話のあらすじ&感想はこちらからどうぞ。
五帖「若紫(わかむらさき)」あらすじ。光源氏は18歳
「若紫(わかむらさき)」のあらすじを一言で表すと
若紫(紫の上)と出会う。2回目の密通で懐妊した藤壺に距離を置かれた光源氏は、その喪失感をうめるかのように若紫を引き取る。
【簡単あらすじ】五帖「若紫」
源氏は瘧病(わらわやみ)を患い、加持祈祷のためお忍びで北山を訪れます。そこで、美しい少女を垣間見て、源氏は一目で心を惹かれます。10歳くらいのその少女は、密かに恋焦がれる藤壺によく似ており、少女の祖母の弟にあたる高僧に出自を聞けば、藤壺の兄・兵部卿の宮の娘であるということです。
源氏18歳、その少女は10歳、妻にするにはあまりに幼い少女ですが、手元において育てながら、理想の女性に仕立て上げたいと思う源氏は、少女を育てる尼君のもとに熱心に通い、あの手この手で引き取りたいと懇願しますが、尼君の承諾は得られません。尼君は病がちで、周囲は少女の将来に不安を感じていた。
北山での祈祷から都に戻った源氏は、気が進まないながら、正妻・葵上のいる左大臣邸に顔を出しますが、夫婦関係は冷え切っています。
源氏が若紫に執心している頃、宮中では藤壺が体調を崩し里下りをしていました。藤壺への思いが募るばかりの源氏は、二度目の逢瀬を求め、最初は拒んでいた藤壺も源氏の泣き崩れる姿に再び許してしまいます。藤壺は一度ならず二度も関係を持ってしまったことを悔やみ、さらに懐妊の兆候が現れ始め、嘆き苦しみます。藤壺のお腹の子は帝ではなく、光源氏の子なのですが、その事実を知らない帝は藤壺の懐妊を聞き、いっそう藤壺を寵愛します。
そして若紫の世話をしていた尼君が亡くなり、実の父・兵部卿の宮が若紫を引き取りに現れる。それを知った光源氏は、若紫を強引に自身の自宅に連れて帰ってきてしまいます。
当初は不安だった若紫も次第に緊張はほぐれ、可愛らしく光源氏になつく様子にますます愛おしさが増す源氏だった。源氏の膝の上に座って人形遊びやお絵かきをして過ごす二人の様子は、まるで絵のようにとても美しいものでした。
特にこの頃の光源氏は藤壺との距離感で女性と向き合っている印象を受けます。元服するまでは藤壺の膝の上に乗ることも構わなかったのが元服したばかりに藤壺のそばに寄れなくなって、女性として藤壺を求め始めます。全てのスタート地点はそこで、最終手段として藤壺に似ている若紫を手塩にかけて藤壺のようなお人に育てようという思考回路になったんだと思います。
五帖「若紫」の主な登場人物
光源氏:18歳。
葵の上:22歳。源氏の正妻。源氏とは心が通い合わない。
藤壺:23歳。帝の妻で、光源氏の継母。
尼君:紫の上の祖母。光源氏が祈祷を受けた僧の姉。
若紫:10歳。藤壺に似ている若紫を垣間見て源氏は自分好みの女性に育て上げたいと思う。
五帖「若紫」のポイント:自分好みの女性を育て上げたい。
18歳の源氏は突然急死した夕顔のことで思い悩み瘧病(わらわやみ)にかかります。午後になると熱が出る症状に苦しむ源氏は、お忍びで北山の聖を訪ねます。その寺で垣間見た10歳の童女・若紫のかわいらしさに心奪われます。恋慕する継母・藤壺の面影があり、この童女を自分好みの理想の女性に育て上げたいと強く願う源氏。正妻・葵上との不仲や、藤壺への2度目の密通で心が張り裂けそうな源氏は、若紫に出会ったことで、生きる希望が湧いたように感じます。
心の中には藤壺、ひいては亡き桐壺への思いが離れない光源氏。永遠の愛を成就させるために若紫を自分好みの大人の女性に仕立てあげたいと思います。これは古今東西を問わず、世の男性のロマンなのかもしれません。
「光る君へ」では何話のどの辺りに出てくる?
1話”約束の月”で「若紫」のオマージュが描かれています。
ある日、まひろが飼っていた小鳥が鳥かごから姿を消しました。心配で探し回るまひろ。川べりまで探しに来ました。そこで三郎(のちの道長)と運命の出会いです。三郎はまひろを慰めようと特技の足芸(足の指で枝をつかんで自分の名前を書いて見せる)を披露します。
『源氏物語』五帖”若紫”では、夕暮れに紛れて源氏が読経が聞こえる家を垣間見ると、大きくなったら美しくなること間違いなしの女の子の姿が目に入ります。その子は泣いていたのか頬を赤く染めていて、それがますます可愛らしいのです。
そして、33話”式部誕生”のラストシーンで道長がまひろに「褒美」として送った扇子に、三郎/道長とまひろの出会いのシーンが描かれていました。道長の愛があふれていて、愛おしそうに扇を見つめるまひろの表情も素晴らしくてとてもロマンチックなシーンです。
雀の子を犬君(いぬき)が逃がしつる
雀の子を犬君が逃がしてしまったの。
『源氏物語』五帖”若紫”より
1話”約束の月”と33話”式部誕生”のあらすじは↓のリンクからお読みいただけます。
- 2話鳥かごからまひろの鳥がいなくなって探しに行った河原で三郎と出会う
- 33話道長からまひろに送られた扇子に二人の出会いのシーンが描かれていた
1話”約束の月”を見た時点では『源氏物語』を全然読んでいなかったので、全く気付きませんでした。今になってあれこれ分かってきて楽しさが倍増しています。まだまだ拾い切れていないとおもいますので、よかったら教えてください。
大河ドラマ「光る君へ」の全話ネタバレあらすじはこちらかどうぞ↓
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まとめ
四帖「夕顔」の簡単あらすじと、「光る君へ」におけるオマージュを探りました。
夕顔は光源氏の理想像にピッタリの女性でした。でもあっという間になくなってしまいます。夕顔が亡くなって初めて侍女の右近から、実は夕顔はかつて頭中将の恋人で2人の間には娘もいると聞かされる光源氏。後の因縁へと続いていきます。
夕顔亡き後、主を失った右近を見捨てず面倒を見る光源氏。こうやって一度関わりを持った人は最後まで面倒を見るというのが光源氏の情の深いところです。
もののけや闇の恐ろしさ等、平安時代の世界観を存分に感じる四帖”夕顔”。光源氏がよく泣くこと、泣くこと。全てが前世からの因縁ということで受け入れるには、潔さすら感じます。
『源氏物語』は54帖の超大作。スキマ時間を利用して3か月かかってやっと読破しました。前半で目の疲れに悩まされて、耳の読書を色々試してみました。その様子はこちらからお読みいただけます。
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「源氏物語」を読んでみたい方におすすめの本7選!
『源氏物語』原文は文字数約100万文字(といってもイメージ沸きませんよね)、400字詰め原稿用紙で約2400枚と言われています。現代語訳だと注釈の言葉も入ってくるので、とんでもない長編小説です。
一番売れている現代語訳は角田光代さん版。2024年8月時点で7巻まで刊行されています。
角田光代さんの現代語訳はまだ全部刊行されていないので、今すぐ読みたい方は瀬戸内寂聴版か与謝野晶子版をおすすめします。
よし!と読み始めたものの、須磨の巻あたりでギブアップするのを「須磨がえり」(高床式倉庫のネズミ返しみたいなもの?)と言うらしいですが、二帖”帚木”で「どの巻もこんなに長いの~」と思って諦める人も多いと聞きます。
私は七帖”紅葉賀”辺りで目が疲れてオーディオブック併用にしました。オーディブルだと収録時間は『源氏物語・与謝野晶子版』で70時間。瀬戸内寂聴版で135時間くらいです。途中寝てしまったり、意識を失いながら、約3か月で聴き終わりました。
いきなり100万文字の大海に漕ぎ出さず、とにかくざっくり『源氏物語』を味わいたい方には、田辺聖子さんの『新源氏物語』がおススメです。一帖”桐壺”がなくて二帖”帚木”から始まっていて、ぎゅっと詰まっています。
参考文献としておススメなのは「紫式部の欲望」。作者の酒井順子さんの着眼点が面白くて、今のご時世だと非難されてしまうかもしれない見解も楽しく読めました。
「イギリスは美味しい」など英国エッセイでご存知の方も多いかもしれない国文学者の林望先生の源氏物語関連本は、分かりやすく古典に寄せた知見を読めます。「くり返し読みたい」シリーズは特に絵が多くて優しい内容です。
真打ちは林望先生の「謹訳源氏物語」。林望先生の「謹訳平家物語」もとてもいいのですが、源氏物語も読みやすくて、リンボー先生独特の品があります。前書きを読むと内容が予想できるので、ネタバレ不要の方はご注意下さい。
※本ページの情報は2024年8月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認下さい。
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