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『塩売文太物語』どんな話?【べらぼう】の瀬川が大事にしている理由は?

『塩売文太物語』はどんな話? べらぼう
『塩売文太物語』と『べらぼう』の瀬川

大河ドラマ『べらぼう』で、花の井改め五代目「瀬川」(小芝風花さん演)が度々読んでいる『塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)』について

・『塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)』は、どんな内容なのか知りたい
・『べらぼう』ではどこで出てくるのか知りたい
・どうして瀬川が『塩売文太物語』を大切にしているのか知りたい!

というあなたにお届けします。

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『塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)』とは?

『塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)』は、1749(寛延二)年に版元・鱗形屋から刊行されました。作者不詳です。

『舌切りスズメ』+『ツルの恩返し』+『シンデレラ』を足して3で割ったような、勧善懲悪、家族愛に満ちた夢のあるお話です。

いろは
いろは

『べらぼう』的にご紹介しますと、片岡愛之助さん(鱗形屋)が、1750年生まれの横浜流星さん(蔦重)が生まれる前の年に刊行した子供向けのおとぎ話本。ということになります。

ざっくりあらすじ

昔、常陸の国に塩売りの文太夫妻がいました。正直者で一人娘の小しおを慈しんでおりました。地元一の塩問屋・大宮司が、小しおを嫁にしたいと申し出ましたが、小しおは承諾しません。

大宮司に仕えている「ねじかねばばあ」という老婆は、褒美欲しさに小しおにあの手この手で迫り、ついには理不尽な嫌がらせをします。

さて、小しおのところに通う助六という商人の若者がいまして、いつしか二人は恋仲になっていました。小しおは大宮司から預かって世話をしていたオシドリを逃がして、助六と都に駆け落ちします。

残された文太夫妻が罰として「すまき」にされて海に投げ込まれようとした時、役人がやってきて文太夫妻を助けます。

実は、この役人は小しおが逃がしたオシドリの化身だったのです。小しおと駆け落ちした助六は、実は有栖の中将という身分の高い貴族でした。都で小しおと助六は幸せに暮らしました。めでたしめでたし。

実際の『塩売文太物語』と、詳しいストーリーをご紹介します

『塩売文太物語』の表紙

『塩売文太物語』表紙:国立国会図書館デジタルライブラリー
『塩売文太物語』表紙:国立国会図書館デジタルコレクション

『べらぼう』で花の井が手に持っていたのと同じ図柄の表紙です。

1.正直者の文太夫妻

常陸の国に、塩売り文太という者が住んでおりました。

昔むかし、常陸の国に塩売り文太という者が住んでおりました。暮らしは貧しかったのですが、夫婦とも正直者で、小しおという娘が一人娘がおりました。小しおも心のやさしい娘で、とくに歌を詠むことが上手でした。

2.大宮司が小しおを嫁に欲しいと言い、ねじかねばばあが乗り出す

塩売文太2丁目
大宮司は小しおを嫁にほしい(右側頁)。ねじかねばば、褒美ほしさに仲立ちをすると言い出す(左側)

地元一番の塩問屋・大宮司(画面右側「大」のマークの人)は、小しおを嫁にしたいと思います。大宮司に仕えている「ねじかねばばあ」(画面中央でひざまずいている「ね」のマークの人)は褒美欲しさに「私に任せてください」と話します。

3.都の商人・助六と小しおは恋仲に

塩売文太3丁目
かたや、文太夫妻に出入りする商人・助六と小しおはいつしか恋仲に。

話は変わって、文太夫妻のところに時々やってくる歌好きの都の若い商人・助六(左にいる「助」のマークの人)。歌好きの小しおと気が合って、二人はいつしか恋仲に。文太夫妻もこれを微笑ましく思い、二人をそっと見守っていました。

4.ねじかねばばあはあの手の小手で小しおを説得するが…

『塩売文太物語』4丁目
(左)小しおを、いぶし殺そうとするねじかけばばあ。(右)ねじかねばば、あの手この手で小しおを説得しようとする。

小しおを大宮司の嫁にしたいねじかねばばは、華やかな小袖や、櫛・笄(こうがい)などを見せびらかして、小しおの気を引こうとしましたが、小しおは首を縦に振りません(画面右側のページ)。

ねじかねばばあはあの手この手で小しおを説得しますが、小しおは大宮司への嫁入りを拒否します。腹を立てたねじかけばばあは小しおを松葉いぶしにします。

5.小しおは大宮司のオシドリを逃がす

『塩売文太物語』

やっとの思いで逃げ帰った小しおは、自分が助八を思う気持ちと、一羽だけ捕らわれているオシドリの身を思い重ね、オシドリを籠から逃がしてやりました。オシドリは大喜びで空に舞い上がりました。

大宮司からの縁談も断り、預かっているオシドリを逃がしたので、もう小しおは家にはいられません。(右側頁)。

ねじかけばばあは、いまいましい小しおをどうしてやろうかと算段中です(左側)。

6.小しおと助六は都へ。小しおの両親は…

『塩売文太物語』
小しおと助六は都に逃げる(右側)。小しおの置手紙を読む文太夫妻(左側)

助八は小しおを連れて都へ逃げることにしました。大宮司のオシドリを逃がしたので、どんな仕打ちがあるのか分かりません(画面右側)

小しおと助八が都へ逃げた後、文太夫婦は娘の書き置きを見て、助六殿と連れ立って立ち退いたことを知って安心しました(画面左側)。

7.大宮司に「すまき」にされる文太夫妻

『塩売文太物語』
すまきにされて、重りをつけて海になげこまれようとする文太夫婦。

嫁にしたかった小しおが駆け落ちをして、大事にしていたオシドリも逃がしてしまわれ、腹を立てた大宮司は、小しおの両親の文太夫婦を「すまき」にして海に投げ込もうとしました。

娘思いの文太夫婦は、小しおのためならどんな責めもいといません。

8.すんでのところで、代官所の侍、あらわる!

『塩売文太物語』
すんでのところで現れた代官所の役人のおかげで、文太夫婦は無罪放免に。

今にも文太夫婦が海へ投げ込まれようとしていた時、突然、代官所の侍が使者として現れると、夫婦の罪が許されたから、すぐに縄をほどくようにと、大宮司の家来たちに命じたのでした。

いろは
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代官所の役員に「代」とか「侍」などのマークがついていないのが、オシドリの化身を連想させますね。

9.代官所の侍は、実はオシドリの化身だった

『塩売文太物語』
代官所の侍は実は小しおが逃がしたオシドリの化身だった。

代官所の侍は、実はオシドリの夫婦でした。大宮司に捕らえられて、長い間、妻と引き離されていたのを、小しおが逃がしてくれたおかげで、夫婦が再会できたのです。

そのお礼として文太夫婦を助けたのでした。代官所の侍は、つがいのオシドリの姿に戻って空へ飛び去っていきました。

10.文太夫婦が都に小しおを訪ねると

『塩売文太物語』
都に小しおを訪ねてみると、なんと助六は高貴な貴族だった。

オシドリに助けられた文太夫婦は、小しおに会いに都を訪れます。
小しおを連れて都へ逃がれた助八という若者は、実は有栖(ありす)の中将という、身分の高い貴族なのでした。商人を装って、和歌に詠みこまれた歌枕の地を訪ねて常陸の国に通っていたのでした。中将殿と小しおが、幸せに暮らしたことは、言うまでもありません。めでたし、めでたし。

裏表紙:版元は鱗形屋

『塩売文太物語』

右側には新しい本の広告です。『塩売文太 上下』や『酒呑童子』など書かれています。

いろは
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左ページは「読んだら返してね」という意味の歌が書かれているそうです(国立国会図書館子ども図書館HPより)。

「寛延二年 巳 正月 版元 鱗形屋」とあります。1749年の本がデジタル技術の進歩で、家にいながら今も読めるのはすごいことだと思います。

『塩売文太物語』は、『舌切り雀』や『ぶんぶく茶釜』などの江戸時代の絵本と一緒に、国立国会図書館子ども図書館に所蔵されています。詳しくはこちらからどうぞ。※本記事の写真は「国立国会図書館デジタルコレクション」より掲載させていただきました。

『べらぼう』ではどこで出てくる?

大河ドラマ『べらぼう』では、序盤から花の井(小芝風花さん)が、松葉屋での休憩時間に『塩売文太物語』を手に取って読んでいる映像が流れています。

8話「逆襲の『金々先生』」で、平賀源内に蔦重が「瀬川/花の井と子どもの頃に将来を約束し合ったとかないの?」と聞く場面で、蔦重が瀬川とはそんな仲じゃないんですよ。と説明するのに二人の子ども頃の回想シーンが流れます。

あざみ(瀬川の子どもの頃)が井戸に落とした根付けを、柯理(からまる・蔦重の子どもの頃)が取ってあげようとするも、なかなかうまくいかず、もう帰らないと親父様に怒られると思った柯理があざみに「『塩売文太物語』をあげるから手打ちにしよう」と泣きつく。

『べらぼう』8話より

子どもの頃から男前なのは瀬川(小芝風花さん)で、それに引っ張られているのが蔦重(横浜流星さん)という関係。何かにつけて瀬川は蔦重を助けようと奔走します。花の井から瀬川を襲名したのも、蔦重が作る吉原細見”籬の花”をヒットさせたかったから。

ですが、瀬川の本当の気持ちは蔦重を思ってのこと。あいにく、8話の時点では蔦重はまだその思いに気付いていません。

2話で源内の気持ちに応えて「瀬川」を演じてくれた花の井(現・瀬川)の心意気を買っている源内は、瀬川の蔦重への気持ちも知っています。蔦重に「瀬川を身請けしてやればいい」と言いますが、蔦重の「吉原で育った者は(吉原の女を好きになるような)心根は抜かれちまうんですよ」という言葉に、「虚しい話だね」と瀬川の切なさに共鳴しています。

『べらぼう』2話のネタバレあらすじ

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瀬川はどうして『塩売文太物語』を大切にしているの?

では、瀬川はどうして『塩売文太物語』を大事そうにいつも眺めているのでしょうか?

瀬川と蔦重の想いが通じ合った9話で、瀬川(小芝風花さん)が『塩売文太物語』を片付けようとしている禿に向かって「わっちが初めて男からもらった贈り物でござんしてなぁ」と話す場面からも、

最大の理由は、おそらく大好きな蔦重からもらった本だからですが、『塩売文太物語』のストーリーに自分を重ねているので、より一層大事にしている。と管理人は思います。

『塩売文太物語』の物語からは

・両親も娘のことを大事にしている
・オシドリを助けて徳を積んで恩返しされる
・どうにもならないから心中しようという発想はない
・本当に好きな人のところに行ってハッピーエンド
・助六は実は高貴な貴族
・意地悪ばあさんもちゃんと登場している

・誰も傷つかない、死なない

その他の子ども向けの昔話本では、「悪い事をしたら罰が当たって成敗される」等、割と残酷な展開もありますが、『塩売文太物語』のねじかねばばあにはお咎めなしですし、全体を通して無償の愛と、心温まるポイントがいっぱい詰まっているので、心から愛せる物語なのだと感じました。

シンデレラストーリーと「徳を積む」話の両方がバランスよく詰め込まれた話なので、(おそらく両親に吉原に売られた)瀬川は、両親の愛情を一心に受けて、大富豪に身請けされるか、大好きな蔦重とハッピーエンドになる。と空想して、自己投影して、本から癒しを得ていたのと考察します。

『塩売文太物語』は、当時、大流行した心中モノの影響も受けていないので、助六と心中するのではなく「生きていれば必ず運命は切り開かれる」という展開も、男気のある瀬川の心情にピッタリで、『塩売文太物語』を大切にしているのだと思います。

蔦重も『塩売文太物語』を大事に思っていた

同じく9話で、蔦重は瀬川に足抜けをさせて一緒に駆け落ちしようと企てます。ちょうど折しも玉菊燈籠の日、瀬川に貸す本の中に、一般女性が吉原大門を通行できるように引手茶屋が発行する通行証をはさみます。

その偽の通行証の、名前が「しお」。蔦重も『塩売文太物語』の小しおと助六のようにハッピーエンドになることしか想像していない様子が見てとれます。

いろは
いろは

『べらぼう』9話では、一歩先に駆け落ちした新之助とうつせみが捕まって、見せしめにうつせみが罰を受けていました。女将・いねが言い放つ足抜けした女郎の行く末と、直接いねの真意を聞いたことで、瀬川は鳥山検校の身請けを受ける決心をします。

まとめ

五代目瀬川(小芝風花さん)が、『べらぼう』の中で度々読んでいる『塩売文太物語』について

・『塩売文太物語(しおうりぶんたものがたり)』は、どんな内容なのか知りたい
・『べらぼう』ではどこで出てくるのか知りたい
・どうして瀬川が『塩売文太物語』を大切にしているのか知りたい

をお届けしました。

いろは
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管理人は、270年以上前の絵本の実物が見られるということが一番の驚きでした。タイトルのインパクトが薄いためか、現代ではあまり知られていない『塩売文太物語』。子どもたちにも読んでもらいたい絵本です。

『べらぼう』の見逃し配信がどこで見れるかこちらでご紹介しています↓

『べらぼう』ネタバレあらすじまとめはこちらから↓ 

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管理人いろは

中学2年生の国語の授業で平家物語「敦盛の最期」を勉強して以来、歴史ドラマにはまっています。特にNHKの大河ドラマが大好きです。リアルタイムでテレビを見る時間がないので、あとから見逃し配信を見たり、過去の作品をイッキ見して楽しんでいます。ゆかりの地を訪ねるのも楽しみの一つです。ドラマにほへとでは、管理人いろはが実際に見た大河ドラマの情報をまとめています。PCやスマホでイッキ見する方法も紹介しています。大河ドラマよ永遠に♪

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