大河ドラマ『べらぼう』の5話と6話で出てくる「地本問屋」と「書物問屋」や「株仲間」という組織。一体なに?違いはなんだろう?と思った方も多いのではないでしょうか?
この記事では
・「地本問屋」と「書物問屋」って何?違いは?
・『べらぼう』の蔦重との関係は?蔦重の挑戦は?
・『べらぼう』全話を見たい!
そんなあなたにお届けします。
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地本問屋と書物問屋の違いを比較一覧表にすると
地本問屋と書物問屋の違いを分かりやすく簡単な比較表に整理してみました。
地本問屋 | 書物問屋 | |
---|---|---|
扱う書籍 | 黄表紙、洒落本、読本、浮世絵など娯楽書 | 儒学書、仏教書、医学書、法律書など学問書 |
ターゲット | 町人・庶民 | 武士・学者・医者などの知識階級 |
特徴 | 娯楽中心、大衆向け | 教養・実用中心、知識人向け |
『べらぼう』では | 蔦屋重三郎(横浜流星さん演) (黄表紙や浮世絵を出版) | 須原屋茂兵衛(里見浩太朗さん演の須原屋市兵衛がのれん分けしてもらった最大手) (学問書の出版で有名) |
影響 | 町人文化を発展させた | 武士や学者の知識を支えた |
『べらぼう』5話で、蔦重(横浜流星さん)が須原屋市兵衛(里見浩太朗さん)から、地本問屋には「株仲間」はなくて単なる「仲間」だと聞いて愕然としていました。
そしてさらに須原屋からのアドバイスで「奉公する」からの「のれん分け」という道があると知った蔦重は、鱗形屋(片岡愛之助さん)のお抱え改めになります(べらぼう6話)。
地本問屋とは?~江戸のエンタメを支えた流通システム
地本問屋は、主に娯楽向けの出版物を扱う問屋で、庶民向けの読み物や浮世絵などを取り扱っていました。「地本(じほん)」とは、絵入りの娯楽書籍を指す言葉で、具体的には次のようなジャンルの本が流通していました。
地本問屋が扱った代表的な書籍
戯作は大きく、洒落本、読み本、滑稽本、人情本、咄本、草双紙に分類され(諸説あります)、その中の草双紙が表紙の色によって、赤本、黒本、青本、そして黄表紙へと発展していきました。
- 洒落本(しゃれぼん) … 色恋をテーマにした大人向けの風俗本。
- 読本(よみほん) … 武士や妖怪の活躍を描く、後の時代小説の原型。
- 滑稽本(こっけいぼん)…庶民の生活や人情をコミカルに描いた笑いを誘う内容。
- 人情本(にんじょうぼん)…恋愛や友情、人情など心理描写や人間関係に焦点。
- 咄本(はなしぼん)…短い笑い話を集めた。落語とともに発展。等
- 草双紙(くさぞうし) … 絵が多く、子供向けの娯楽本として親しまれた。
草双紙の大人向けの滑稽絵本が発展して、表紙の色によって赤本(童話やなぞなぞ)、黒本(歴史物語や芝居のあらすじ)、青本(恋愛物語や遊郭の話など)となりました。
1775年恋川春町の『金々先生栄花夢』が鱗形屋から刊行されて大ヒットすると、風刺や知的な笑いを交えたジャンルが確立されて、その表紙の色から『黄表紙』と呼ばれました。
◎地本問屋の特徴
- 版元(出版社)のような役割を果たし、作家や絵師と契約して本を作る。
- 販売だけでなく、企画や編集の仕事も担った。
- 町人文化の発展に大きく貢献し、庶民が気軽に楽しめる読み物を提供した。
- 『べらぼう』の主人公・蔦屋重三郎が代表的な地本問屋の経営者。
地本問屋の最大の功績は、江戸時代の庶民に「本を読む楽しみ」を広めたことです。多くの人々が手に取りやすい娯楽本を提供し、出版文化を大衆化させる役割を果たしました。

蔦重は地本問屋になる前、貸本業も営んでいました。まさに江戸庶民の本を楽しむ裾野を広げていた功績大です。
書物問屋とは?~学問と実用書を支えた問屋
一方、書物問屋は学問書や実用書を扱う問屋で、地本問屋とは異なり、より知識・教養を重視した出版物を取り扱っていました。

『べらぼう』6話で鱗形屋が海賊版を作っていたとしょっ引かれたのも「節用集」という事典=固い本で。鱗形屋には固い本を作る権利がなかったんですね。
◎書物問屋が扱った代表的な書籍
- 儒学書・仏教書 … 武士や学者が学ぶための学問書。
- 医学書・実用書 … 医者や職人が使用する専門書。
- 寺子屋向けの教科書 … 『千字文』『往来物』などの教育本。
- 法律書・辞書 … 幕府の官僚や学者が利用する書籍。
書物問屋の特徴
- 武士や学者、医者などの知識人向けの本を販売。
- 寺子屋などの教育機関にも書籍を提供した。
- 価格が高めで、一部の知識階級の人々が主な顧客だった。
- 江戸の「書林(しょりん)」と呼ばれる本屋が、販売拠点となった。
書物問屋は「学問や知識を普及させる役割」を果たし、武士や学者、知識階級の間で重要な存在でした。庶民向けの娯楽本を扱う地本問屋とは違い、教育や専門知識を広めることに貢献しました。
地本問屋と書物問屋は江戸文化を支えた二大出版システム!
江戸時代の出版業界は、「地本問屋」と「書物問屋」という2つの問屋が支えていました。
- 地本問屋は娯楽本を扱い、庶民の文化を豊かにした。
- 書物問屋は学問や実用書を流通させ、知識の普及を支えた。
この二つの問屋があったからこそ、江戸時代には町人文化と武士文化が共存し、多くの人々が本を楽しむことができたのです。
株仲間とは? 江戸時代の商工業を支えた組織
『べらぼう』5話でも疑問に思った方も多い「株仲間(かぶなかま)」について、簡単に解説します。
広い意味での「株仲間」とは、江戸時代に存在した商工業者の同業組合のようなものです。特定の職種ごとに組織され、幕府の許可を得て営業を独占する権利を持っていました。
例えば、材木商や魚問屋、書物を扱う書物問屋などがあり、同業者が集まりルールを定めることで業界の秩序を守っていました。
株仲間の「株」とは、営業権のことで、これを持つことで商売が許されました。株は売買や相続も可能で、これにより新規参入が難しく、既存の業者が利益を守れる仕組みでした。また、幕府に営業税(運上金)を納めることで、公的に商売が認められました。
株仲間は、江戸の経済を支えた重要なシステムであり、現代の業界団体や商工会の原型ともいえる存在でした。
書物問屋と株仲間の仕組み
書物問屋は株仲間というシステムのもとで運営されていました。株仲間は、営業を独占する権利を持つ代わりに、運上金(税金)を納めることで幕府から公認されました。江戸の書物問屋は「書物問屋仲間」を結成し、新規参入を制限しながら業界の安定を図っていました。
もともと、江戸の出版業界は地本問屋(浮世絵や黄表紙など娯楽本を扱う)と、書物問屋(学問書や実用書を中心に扱う)に分かれていました。しかし、蔦屋重三郎(蔦重)のように、地本問屋から書物問屋へと進出する者も現れ、業界は変化を遂げていきました。
この株仲間制度により、一定の品質が保たれる一方で、価格競争や新規参入が制限されるデメリットもありました。そのため、幕府は天保の改革(1841~1843年)で一時的に株仲間を解散させましたが、経済の混乱を招き、多くが後に復活しました。
蔦屋重三郎が地本問屋から書物問屋へ拡大した経緯
蔦屋重三郎(蔦重)はもともと、浮世絵や黄表紙、洒落本を扱う地本問屋 として成功を収めました。特に喜多川歌麿や山東京伝と組んで出版した洒落本や黄表紙は大ヒットし、江戸の出版業界で強い影響力を持つようになりました。
しかし、寛政の改革(1787年~1793年)の影響で洒落本や黄表紙は規制を受け、地本問屋としての事業が制限されることになります。そこで蔦重は、より長く読み継がれる本を扱うために 書物問屋としての展開を進める ことを決断します。
その一環として、曲亭馬琴(滝沢馬琴) を起用し、読本という新たなジャンルの出版に挑戦しました。蔦重は馬琴に『高尾船字文』を執筆させ、これが後の馬琴の代表作『南総里見八犬伝』につながる流れを作りました。さらに、歌舞伎脚本を基にした書籍の出版や、知識人向けの書物の出版にも手を広げていきました。
こうして蔦屋重三郎は、地本問屋としての娯楽作品の出版だけでなく、書物問屋としての読本や実用書の出版にも乗り出し、江戸の出版業界を牽引する存在 となっていったのです。
しかし、蔦重自身は1797年に亡くなり、彼が目指した書物問屋としての事業の発展を見届けることはできませんでした。
大河ドラマ『べらぼう』では、蔦屋重三郎が活躍した江戸の出版業界が描かれます。
『べらぼう』のあらすじはこちからご覧いただけます↓
また、映画『八犬伝』では、蔦重の下で本づくりを学んだ曲亭馬琴が『八犬伝』を完成させる情熱と執念が描かれています。
映画『八犬伝』については、よろしければこちらをどうぞ↓
まとめ
大河ドラマ『べらぼう』の5話と6話で出てくる「地本問屋」と「書物問屋」の違いや、「株仲間」についてご紹介しました。
『べらぼう』5話では、花の井に株仲間のことも知らないで「トンチキもいいとこだよ」と言われていた蔦重(横浜流星さん)が、問屋の違いや「株仲間」という違いも飛び越えてどんどん前進していきます。
大河ドラマ『べらぼう』で、蔦重が江戸の出版業界にどんな旋風を巻き起こすのか、ますます楽しみですね。
『べらぼう』ネタバレあらすじまとめはこちらから↓
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