この記事では、全54帖ある超長編『源氏物語』の二十六帖「常夏(とこなつ)」のあらすじと主な登場人物を簡単にまとめました。
『源氏物語』二十六帖「常夏(とこなつ)」は『光る君へ』では何話のどの辺りのこと?についても独自の考察と感想もお届けします。
『光る君へ』『源氏物語』の両方を楽しんでいただくきっかけになれば幸いです。
大河ドラマ「光る君へ」の全話のあらすじ&感想はこちらからどうぞ。
【源氏物語】二十六帖「常夏(とこなつ)」あらすじ。
一言あらすじは?
光源氏と内大臣(もと頭中将)のバトル。内大臣は引き取った近江の君の姫らしくないさまに落胆。
もうちょっと長いあらすじは?
夏の盛りの六条院で、訪れた若い公卿たちに涼をとるように勧める光源氏。それは情報収集の場でもあり、内大臣が呼び寄せた娘のことを聞きだします。恋仲の夕霧と雲居の雁の仲を許さない内大臣の考えにも不満を表す光源氏に玉鬘は実父・内大臣にいつ会えるのかと思い悩みます。
一方、内大臣も、おしとやかさや姫君の素養のない娘・近江の君に落胆し、その処遇に思い悩む。
主な登場人物
光源氏:36歳。
内大臣:光源氏の亡き妻・紫の上の兄。若い頃から光源氏の親友でもありライバル。
玉鬘:22歳。光源氏から言い寄られて困っていたが、光源氏の悪気のなさが分かってきて慣れてきた。
近江の君:内大臣の娘。玉鬘の代わりに内大臣が探し出して引き取った。
二十六帖「常夏(とこなつ)」のポイント
六条院での夏が描かれています。平安時代にどうやって調達したのか「氷水」を若い公達にふるまっている場面などもあり、平安貴族の暑い都の夏の過ごし方が垣間見えます。撫子が咲き誇る夏の御殿の西の対に若い公達を連れて行く光源氏。玉鬘を見せたいけど見せない。手折りたいけど手折れない撫子の花のような玉鬘を連想させる「常夏(撫子の別名)」というタイトルです。
光源氏の息子・夕霧と、内大臣の娘・雲居の雁は幼なじみ恋仲。光源氏は夕霧の位がもう少し上がったら雲居の雁との結婚を許してやりたいと思っていますが、内大臣はそうではなく、義理兄弟であり、若い頃から親友でもある光源氏と内大臣のいがみ合いが少し滑稽にも取れます。
玉鬘に琴を教える光源氏の「大和琴」と「東琴」の違いの説明や、内大臣が琴の名手なので玉鬘も練習すればきっと名手になるという審美眼、練習する時の心構えなど、花嫁教育に力を尽くす光源氏はさすがだと感じます。
内大臣が引きとった近江の君が散々に書かれています。早口、明瞭に言葉を発する。下働きも厭いませんという姿勢。この辺りが姫としてはダメな点ということです。同じことを言うのでも、ゆっくり話す。前と後ろをはっきり言わない→余白の美が生まれる。という平安雅マナーは、今も男性が思い描くの理想の女性像かもしれません。
与謝野晶子版と瀬戸内寂聴版では「光源氏の玉鬘への思い」の現代語訳が若干違います。それぞれの解釈を楽しむことできますので、ぜひ読み(聴き)比べて見て下さい。
「光る君へ」では何話のどの辺りなのか考察、そして感想も。
『光る君へ』では、そのものズバリのシーンはないのですが、1話”約束の月”で道長の兄・道綱と妻・貴子が呼吸を合わせて笛と琴を演奏してる場面がありました。息がぴったりで夫婦仲が良いことが手に取るようにわかる場面でした。
6話”二人の才女”で道綱主宰の漢詩の会で、女房たちが琴を演奏していたシーン。そして23話”雪の舞うころ”では、笛の名手・一条天皇が右大臣・顕光の娘、元子の琴に合わせて演奏するシーンがありました。一条天皇は笛を吹いて共に過ごしてきた定子のことが忘れられず、元子との琴にも呼吸が合わない様子で、途中で笛を吹くのをやめてしましました。
倫子も琴を弾いていた場面がありましたし、ただ演奏するだけではなく、心を通わせるツールとして「琴」はマストアイテムだったみたいですね。
まひろは、母・ちやはの形見の琵琶を、その折々に奏でています。琵琶の音色自体、非常に物悲しい響きで、まひろの辛さや悲しみがひしひしと伝わってくるシーンばかりでした。
「光る君へ」は『源氏物語』を土台にして全方位にストーリーを展開しています。
大河ドラマ「光る君へ」の全話ネタバレあらすじはこちらかどうぞ↓
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まとめ
二十六帖「常夏(とこなつ)」の簡単あらすじと、「光る君へ」におけるオマージュを探りました。
六条院での四季の移ろい、常夏の六条院もどこか涼し気に感じられるのは雅だからでしょうか。外戚関係を結んで確固たる権力を築くには欠くことのできない娘の存在。光源氏と内大臣の娘大作戦は、今後どうなっていくのでしょうか。
光源氏と内大臣の競争心はいくつになっても変わりません。これぞ好敵手です。
『源氏物語』は54帖の超大作。スキマ時間を利用して3か月かかってやっと読破しました。前半で目の疲れに悩まされて、耳の読書を色々試してみました。その様子はこちらからお読みいただけます。
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「源氏物語」を読んでみたい方におすすめの本7選!
『源氏物語』原文は文字数約100万文字(といってもイメージ沸きませんよね)、400字詰め原稿用紙で約2400枚と言われています。現代語訳だと注釈の言葉も入ってくるので、とんでもない長編小説です。
まずはオーディブルでざっくり内容を把握して、興味のある部分を深堀りしていくことをおススメします。
活字や紙のボリュームを見ると「むり~」と思ってしまいますが、オーディブルだと全体ボリュームに関係なく流れていきますので私には耳での読書が合っていました。
一番売れている現代語訳は角田光代さん版。全8巻です。
現代語訳は瀬戸内寂聴版と与謝野晶子版もおすすめします。
読破するぞと読み始めたものの、須磨の巻あたりでギブアップするのを「須磨がえり」(高床式倉庫のネズミ返しみたいですね)と言うらしいですが、そこまでたどり着けず、二帖”帚木”で「どの巻もこんなに長いの~」と思って諦める人も多いと聞きます。
私は七帖”紅葉賀”で目の疲労に悩まされて、オーディオブック併用にしました。朗読の収録時間は『源氏物語・与謝野晶子版』で70時間。瀬戸内寂聴版で135時間くらいです。途中寝てしまったり、翌日はまた最初から、でもやっぱり意識を失いながら、約3か月で聴き終わりました。
いきなり100万文字の大海に漕ぎ出さず、まずはざっくり『源氏物語』を味わいたい方には、田辺聖子さんの『新源氏物語』がおススメです。一帖”桐壺”がなくて二帖”帚木”から始まっていて、ぎゅっと詰まっています。
参考文献としておススメなのは「紫式部の欲望」。作者の酒井順子さんの着眼点が面白くて、今のご時世だと非難されてしまうかもしれない見解も楽しく読めました。
「イギリスは美味しい」など英国エッセイでご存知の方も多い国文学者の林望先生の源氏物語関連本は、分かりやすく古典に寄せた知見を読めます。「くり返し読みたい」シリーズは特に絵が多くて優しい内容です。
真打ちは林望先生の「謹訳源氏物語」。林望先生の「謹訳平家物語」もとてもいいのですが、源氏物語も読みやすくて、リンボー先生独特の品があります。前書きを読むと内容が予想できるので、ネタバレ不要の方はご注意下さい。
※本ページの情報は2024年11月時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認下さい。
#源氏物語
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