この記事では、『江戸生艶気樺焼』の現代語訳とあらすじ、大河ドラマ『べらぼう』では、どんな風に描かれたのかも解説します。
江戸時代の笑いと風刺がたっぷり詰まった黄表紙『江戸生艶気樺焼(えどうまれ うわきの かばやき)』が、大河ドラマ『べらぼう』第29話で登場しました。べらぼうオールキャストによる劇中劇はみどころ満載でした!
主人公・蔦屋重三郎が出版界を席巻する中、若き才能・山東京伝/北尾政演(演:古川雄大さん)の代表作として描かれた本作は、当時の世相をユーモアたっぷりに風刺し、山東京伝が黄表紙作家として不動の地位を確立した作品です。
主人公・仇気屋艶二郎(あだきや えんじろう)は、幅広で特徴的な鼻の持ち主。この団子鼻は「艶二郎鼻」「京伝鼻」と呼ばれて一世を風靡しました。
実際の『江戸生艶気樺焼』の全ページ画像&現代語訳とあらすじと共に、作品のストーリーや登場人物をご紹介していきます。
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- 『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』とは?
- 作者の山東京伝/北尾政演(古川雄大さん演)とは?
- 実際の『江戸生艶気樺焼』の全ページ&現代語訳
- 表紙:『江戸生艶気樺焼』
- 1頁:艶二郎「一生の思い出になるような浮気ができればなぁ」
- 2、3頁:遊び人トリオが勢ぞろい。
- 4、5頁:艶二郎は愛人(架空)の名前の入れ墨を量産。
- 6、7頁 評判の芸者・おえんを50両で雇って噂を立てようとするも空振り。
- 8、9頁:嘘の色恋沙汰の噂を流すが、噂にならず。
- 10、11頁:焼きもちを焼いてくれる年上女性を妾にする
- 12、13頁
- 14、15頁:ちゃんと焼きもちを焼いてくれる妾
- 16、17頁:浮名の名前と自分の紋を入れた提灯を注文
- 18、19頁:色男はぶたれるものだ。ぶってもらって気絶。金持ちが嫌になって期限付きで勘当してもらう
- 20、21頁:色男の商いをしよう。
- 22、23頁:浮名を千五百両で身請けして、嘘の心中へ。
- 24、25頁:わざわざ格子を壊して二階にハシゴをかけて駆け落ちっぽく身請け。
- 26、27頁:この辺で「嘘の心中」をと思ったところ、盗賊に身ぐるみ剝がされてしまう。
- 28、29頁:身ぐるみ剝がされた艶二郎と浮名は「道行興鮫肌(みちゆききょうがさめはだ)」
- 30頁:改心した艶二郎。浮名は艶二郎の妻に。商売繁盛ハッピーエンド。
- 『江戸生艶気樺焼』のオチは?
- 『べらぼう』ではどこで出てくる?
- まとめ
『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』とは?
『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』は、1785(天明五)年に版元・蔦屋耕書堂から刊行されました。作・山東京伝。画・北尾政演。つまり作画とも山東京伝ということです。
「江戸生(えどうまれ)」は、「江戸前」の意味で、「艶気樺焼(うわきのかばやき)」は、「うなぎのかばやき」にひっかけたもの。
『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』のあらすじ
モテない艶二郎が、とことんモテる経験をしてみたいと考え、お金にモノを言わせて自分がモテているかのようなシチュエーションを演出する様子を滑稽に描いた作品です。

江戸湾で捕れた鰻の蒲焼、ということで、ちゃきちゃきの江戸っ子!。ってことですね。
作者の山東京伝/北尾政演(古川雄大さん演)とは?
山東京伝(1761~1816年)は、浮世絵、戯作、随筆など幅広い分野で活躍しました。宝暦十年(1761年)江戸の深川・木場の質屋の息子として生まれました。蔦重より11歳年下です。
本名は岩瀬醒(さむる)。通称を伝蔵。浮世絵師としての画号を「北尾政演(まさのぶ)」と言います。「べらぼう」では北尾重政(橋本淳さん演)の弟子として蔦重と出会い、その後、政演として登場しています。質屋の息子なので、裕福で若いころから吉原に出入りしていたようです。
「京伝」という名前は、住んでいた「京橋」と呼び名の「伝蔵」からのネーミングです。
実際の『江戸生艶気樺焼』の全ページ&現代語訳
国立国会図書館デジタルコレクションより、『江戸生艶気樺焼』の全ページの画像をご紹介させていただきます。『江戸生艶気樺焼』は大ヒットで4回再版されており、3版からタイトルが「江戸生浮気蒲焼」に改題されたそうです。
表紙:『江戸生艶気樺焼』

このカバーには「艶気」とあるので、3版以前の版だと分かります。
1頁:艶二郎「一生の思い出になるような浮気ができればなぁ」

艶二郎が見ているのは、ドロドロ愛憎系浄瑠璃・新内節の正本。
艶二郎「あー、俺もここにあるような、一生の思い出になる浮気を経験できたら、死んでもいい」
2、3頁:遊び人トリオが勢ぞろい。

そこで、遊び人トリオが勢ぞろい。近所の道楽息子・北里喜之介(きたり きのすけ)と、太鼓持ち医者・悪井思庵(わるい しあん)。※北里=吉原のこと。
4、5頁:艶二郎は愛人(架空)の名前の入れ墨を量産。

モテ道の第一歩は、愛人の名前の入れ墨だ。とばかり2~30ほどの架空の名前を彫っていきます(右4頁)
6、7頁 評判の芸者・おえんを50両で雇って噂を立てようとするも空振り。

艶二郎は歌舞伎役者の家に熱狂的なファンが押し寄せるのを羨ましく思い、評判の芸者・おえんを50両で雇って、自分の家に押しかけるようにお願いします。
8、9頁:嘘の色恋沙汰の噂を流すが、噂にならず。

美しい芸者が艶二郎に惚れて、家に押しかけていったという自分の色恋沙汰(もちろん作り話)を右側頁の男性(読売)に江戸中を読み上げて回らせますが、噂にはなりません。
10、11頁:焼きもちを焼いてくれる年上女性を妾にする

そこで、今度はいよいよ吉原に行くことにします。浮名屋の浮名という有名な女郎を訪ねます。艶二郎は浮名の間夫にしてくれと頼みますが相手にしてもらえません(画面右側)。
12、13頁

艶二郎は悪意志庵に浮名を独占させて、艶二郎自身は「新造買い」をします。相当なお金を使って浮名を待ち、浮名との時間を過ごすのを「日本だ」と嬉しがります。※「日本だ」は流行語で「サイコー!」の意味。
14、15頁:ちゃんと焼きもちを焼いてくれる妾

艶二郎は5~6日ぶりに家に帰ると、待っていた妾がちゃんと焼きもちを妬いてくれます。艶二郎もいい気分になって、もうちょっと妬いてくれたら前に欲しがっていた八丈縞と縞縮緬の着物を買ってやるぞ。と上機嫌です。
16、17頁:浮名の名前と自分の紋を入れた提灯を注文

18、19頁:色男はぶたれるものだ。ぶってもらって気絶。金持ちが嫌になって期限付きで勘当してもらう

芝居に感化されて、「色男はとかくぶたれるもの」と吉原の仲之町(メインストリート)でぶってもらうが、ぶたれどころが悪くて気絶してしまいます。
噂はたったものの、艶二郎の思うような内容ではなく、カネに任せて周りが芝居を打っているというもの。艶二郎は家が金持ち。に嫌気がさして勘当して欲しいと頼みます。母親は期限付きで勘当します(75日経ったら帰ってくる条件)。
20、21頁:色男の商いをしよう。

晴れて勘当された艶二郎は色男がするような商売をしようと思い、扇子の紙を売る商売をしようと扇子がいらない季節に紙を売りに出歩きます。
22、23頁:浮名を千五百両で身請けして、嘘の心中へ。

勘当の期限を20日延長してもらって、いよいよ浮名と嘘の心中を決行することにします。浮名を千五百両で身請けして、揃いの小袖を作り、二人の辞世の句を配るように摺ります。
24、25頁:わざわざ格子を壊して二階にハシゴをかけて駆け落ちっぽく身請け。

艶二郎はわざわざ格子を壊させて、そこにはしごをかけて、浮名を連れ出します。駆け落ちだというのに、店主と遣手、振袖新造に禿まで見送ります。
26、27頁:この辺で「嘘の心中」をと思ったところ、盗賊に身ぐるみ剝がされてしまう。

28、29頁:身ぐるみ剝がされた艶二郎と浮名は「道行興鮫肌(みちゆききょうがさめはだ)」

※道行興鮫肌:興が鮫肌で、「興が冷めた」→やっと目が覚めたようです。
30頁:改心した艶二郎。浮名は艶二郎の妻に。商売繁盛ハッピーエンド。

泥棒は、実はお父さんと番頭の狂言。家に帰った艶二郎はすっかり目が覚めて真人間に。そして浮名は艶二郎と夫婦になり、家の商売は末永く繁盛しました。めでたし、めでたし。
『江戸生艶気樺焼』のオチは?
艶二郎はお金をかけて実現した一大スペクタクルな浮気なので、やはりどうしても世間に広めたいと思い、山東京伝に頼んで自分たちの話を草双紙に仕立ててもらいました。それがこの話ですよ。というのが『江戸生艶気樺焼』オチです。
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※本記事の写真は「国立国会図書館デジタルコレクション」より掲載させていただきました。
『べらぼう』ではどこで出てくる?
『江戸生艶気樺焼(えどうまれ うわきの かばやき)』の作者・北尾政演は、大河ドラマ『べらぼう』では、13話から登場しています。『御存商売物』が人気で恋川春町から嫉妬されていましたが、本人はどこ吹く風でした。
28話「佐野世直大明神」の手ぬぐい絵
蔦重は早いうちから政演のマルチな才能に気付き、28話のラストで政演が持ってきた手ぬぐい絵に描かれた「団子鼻」の愛嬌のある男の顔を見て「これだ!」とひらめきます。
29話 誰袖から意知を奪った政言への蔦重の『仇討ち』
蔦重にまとわりついて離れなかった「かをり」の頃から、誰袖は蔦重を兄のように慕い、蔦重も誰袖を妹のように思ってきました。その誰袖が愛する意知を突然奪われ、何かにとりつかれたように呪詛する日々。
今、蔦重が誰袖にしてやれることは、本で意知の「仇討ち」をしてやること。完成した『江戸生艶気樺焼』を蔦重は誰袖に読んで聞かせます。
艶二郎と花魁・浮名の段になると、誰袖の目が輝き始めます。
ハッピーエンドの『江戸生艶気樺焼』に、誰袖の頬に赤みがさし、フフフと笑みもこぼれました。29話で描かれた蔦重の「仇討ち」は佐野政言が奪った誰袖の笑顔を取り戻すことでした。
べらぼうオールキャストによる、劇中劇!!新造を演じたのは…
29話では『江戸生艶気樺焼』の登場人物をべらぼうのオールキャストで演じられていました。
艶二郎:北尾政演、浮名:誰袖、近所の遊び仲間・北里喜之介:朋誠堂喜三二、医者・悪井思庵:恋川春町…。芸者:てい、読売:鶴屋、
中でも、浮名の間夫になるために、浮名に会えない時間相手をする新造役が耕書堂の手代・実の吉だったことにビックリ。声を聴かなければ、美しい女性だと思って気付かずにいました、きっと。
その他にも、2階の格子をわざわざ破って駆け落ちする時の三味線のお囃子を、俄祭りの時や瀬川が吉原を去る時にも「とざい、東西~」と言って、『青楼若菜』のPRをした次郎兵衛や、艶二郎を殴って気絶させてしまう、用心棒役に新之助…と、底抜けに明るくて楽しい劇中劇でした。
べらぼうの1話~最新話までのネタバレあらすじ、みどころ、地口はこちらから↓
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まとめ
蔦重が本で仇討ちをすると決意して、山東京伝/北尾政演をプロデュースした『『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』について
・『江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)』どんな内容なのか知りたい
・『べらぼう』ではどこで出てくるのか知りたい
をお届けしました。
山東京伝の出世作『江戸生艶気樺焼』は、滑稽ながらも人間の欲や見栄を鋭くとらえた、まさに“江戸の風刺文学”の金字塔。
艶二郎と浮世の物語が『べらぼう』29話で、意知と誰袖に重なり合って生き生きとよみがえったことで、江戸の出版文化がさらに身近に感じられるようになりました。
この記事でご紹介しました、実際の挿絵やセリフの数々を見比べながら視聴すれば、『べらぼう』がぐっと深く味わえること間違いなしです。
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